「はいどうも」
「うぃース」
「いやあ、こないださあ」
「なんです?」
「これ(小指立てる)のお店行って、くいっと(コップを運ぶ動作)やってんだけどね」
「ねこさんも好きスね」
「楽しくやってさー。帰ろうとしたわけよ。そしたらね。店から出て速攻よ、速攻。巡回していたんだろーね。公僕の方々が俺の車を通せんぼしちゃうわけ」
「あちゃー」
「まぁ、俺も近場だと思ってうっかりしていたんだけどさー。しゃーないもんはしゃーないなーと」
「ご時世ですしね」
「で、コワヒ顔をしたオジサマ達から何杯飲んだの? とか聞かれたわけ。お店から出てきて速攻だったし、さすがに飲んでないとは言えなかったけど、わざわざ本当のことを言う必要もないじゃん?」
「まあそうすね」
「だから、ビール二口とか言ったわけよ。ちょっとだけです。ちょっとだけって。でもって、その後に……なんだっけ? 例の検査。ふーって息を吐くヤツ。アレをしたのよアレ」
「はあ……」
「そしたらさ。規定値まで到達しなかったでやんの。セーフなのよ、セーフ。いやあ、あの時ばかりはメタボ万歳って思ったね。デブで初めて特したなと思ったよ。公僕ちゃんは俺に注意だけして去っていったよ」
「一体、どれくらい飲んでたんスか?」
「そりゃあまあ、秘密だよ。ははは」
「そんなこともあるんスねえ。で、そろそろ本題いいスか?」
「ああ、いいよ、いいよ」
「今度オープンするお店なんですけど」
「はいはい。そのキャッチフレーズね」
「そうッス。雑誌に広告出す時に使ったり、ノボリに書いたりするっス」
「お店のコンセプトは?」
「えーっと。客質乗務員。いわゆるスッチーっす。店内は飛行機の内部みたいになってて、そこでお客さんとプレイするっす。女の子はみんな制服っす」
「あははは。今時スッチーって単語使うの40超えたオッサンくらいだよ」
「そうすかねえ」
「けど、面白そうだね。飛行機の中みたいになってるの?」
「そうっス。JA○とかAN○とか、そういうの参考にしてるっすよ。特別室のコクピット室なんてのもあって、そこではお客さんがパイロット、女の子がスッチーでいわゆる禁断のプレイが楽しめるっす」
「あははは。実際そんなのあったら飛行機落ちちゃうよ。馬鹿だねえ」
「そうでスね。けどまあ、そういうお店なので」
「店名は?」
「『お癒し航空“穴”』っす」
「あははは。馬鹿だねえ。けどそれだと、こっち(手の甲を頬に当てる)のお店だと間違えられないかい?」
「ああ、そうっすねえ」
「まだ間に合うなら変えた方がいい。『パコパコ航空』とか『フライト夢の国』とか、そんな感じで」
「わかったっす」
「で、なんだっけ?」
「えーと、お店のキャッチフレーズっス。お客さんがそれを見て思わず入りたくなるような物を考えて欲しいっス」
「う~ん、そうだねえ。なかなか難しいようねえ」
「そこをなんとか頼むっす」
「航空会社、飛行機、パイロット、スチュワーデス、機内食……う~ん」
「どうスか?」
「こんなのはどうだろ? 『こちらチン○全開航空、疲れた
「おお、いいっスねえ。素晴らしいっス。さすがはねこさん。常人とは違う感性っス」
「褒められているのか、異常者扱いなのかわからないね」
「いやいやいやいや。勿論、褒めているっス。アレっすよ。さすが業界長いだけはあるっス」
「キミのその喋り方もアレだよ。ははは」
「恐縮っス」
「けど……なんかしっくりこないね」
「そうっすか? 自分は充分いけると思うっスが?」
「インパクトに欠けるっていうのと、韻が悪いな」
「はあ」
「ちょっとまて、考え直すから」
「はあ」
「そうだなあ。う~ん、そうだなあ。う~ん……。そうだ! こんなのはどうだ? 『まんぐり航空CA! 日頃の労働でストレスが溜まっている貴方へ 今夜は楽しく騎乗の旅を!』とか」
「あははははは。それ最高っス。面白いっす」
「こういうのはな。想像力を刺激するんだよ。我々がどんなイメージを作ったとしても、個人の想像力には適わないわけだ。だったら、その想像力をフルに引き出してやればいい。楽しく騎乗の旅なわけだけど、時には急降下しちゃうかも知れない。水平飛行から急旋回しちゃうかも知れない。きりもみになっちゃうかも知れない。そんな想像が楽しいわけだ。そうだろ?」
「良く分からないけど、なんか凄そうな感じがしてきたっス」
「フライトレコーダーはないから、思いっきり操縦桿を動かせばいい。オートパイロットかマニュアル操縦かは客のお好みでだな」
「さっすが業界にこの人アリと呼ばれたねこさんスねえ。次から次へと……兎に角素晴らしいっス。最高っス」
「ま、こんなところでしょ。どうかな?」
「助かりましたっス。充分っす。ありがとうございましたっス」
「また何かあったら呼んで頂戴」
「勿論っす。頼りにしてるっス」
部屋から出ていく二人。
