◎はじめに
『E17』から6年、『R11』から4年、ようやく続編の発売ですよ。や、正確には続編ではなく、要素を受け継いでいるといった感じの作品なわけですが、まぁ似たようなものでしょう。
その間にシリーズのことはすっかり忘れていたオイラですが(作品のアナウンスは知っていましたよ?)、ニコニコ動画にアップされていた体験版を見て、なんかInfinityシリーズの懐かしさを思い出してしまったので、買ってみてプレイしたのであります。
ただまぁ、期待値はそれほど高くなかったです。何せ『E17』をプレイした時に思ったのは、「今後ギャルゲ史上でこれを超える作品が出ることはない」でしたから。如何せん、市場的にこれだけの規模の作品を作るのは無理だろうと。勿論、エロゲではこの限りではないですけどね。
あのシリーズの雰囲気が味わえればそれでOKみたいな感じで購入したのであります。
◎キャラクター
相変わらずの『EVE burst』ですよ(笑) 主人公の一人が公安のエージェントだとか、それがボスをからかったりとか、一般人には持ち合わせていない知識を多くの人が持っていたりとか、どのキャラも一癖も二癖も有りすぎたりだとか、剣乃氏の影響を受けまくり。あ、ダメなわけじゃないですよ。個人的にこのシリーズは剣乃作品の系譜も受け継いでいると思っているので、ああいった感じになるのは問題ないと思います。
ただ、どの人物も描写不足の感はあるわけで、あまり印象に残らない。印象に残っているのは、有名声優を使っているボスであるとか、元恋人の大手町であるとか、キーパーソンのメイであるとか、インパクトの強いキャラばかり。『E17』のつぐみん、ココたん、マヨ、なっきゅ先輩みたいな強烈な個性が感じられる者がいなかったのが残念。
というのも、作品がキャラクターの描写を殆どカットしている所為なんですけどね。ほぼ主要シナリオに沿ったイベントしか発生しない為にキャラクターが傀儡化しちゃっている。どうみても、このキャラクターがこの知識を持っているのはおかしいだろう? ということがあったり、これまで描写された性格とは破綻したセリフがあったりと。整合性という面でもおかしな点がありました。
◎シナリオ
シナリオのプロットという点では『E17』を超えていると思います。単純に2作品を比較すれば、今作の方が凄いです。よくこんなネタを思いつけるものだと感心することしかり。かなり手の混んだアイデアを多数盛り込んでいます。ただ、今作は『E17』ありきなんですよね。『E17』に影響された部分が多すぎる。系譜を受け継いでいるのだから、当然といえばそれまでなんですが、プレイヤーとしては『E17』である程度の耐性が出来てしまっているわけですから、それを超えるネタを見せられたとしても『E17』クラスの衝撃は得られない。兎に角もどかしい。わかってはいたことなのですが、現実として実感すると尚更もどかしく思いますね。
あとは個別ENDがないという点についても、得られるカタルシスを低くしています。個別ENDを辿ることなく、解決編まで到達するので真相を知った時の衝撃度が低い。キャラ毎の個別ENDという形を取らないにしても、全体的なボリュームをもう少し増やした方が完成度は高くなったでしょう。例えるなら初期の頃の『デスノート』みたいなスピード感になっていると。もうちょっと結末を引っ張った方がネタが生きたのではないかと。
そういう意味で遊びの部分がほっと欲しかったです。ストーリー的に時間があまりなく、余裕のある行動を各々が取れないというのはわかるのですが、どうも全体的に忙しすぎている感が強かったです。『ひぐらし』で言う部活の部分。恋愛AVGに代表される日常会話のイベントが弱い。ああいったイベントは単体ではそれほど効果ないのですけど、最終的な結末を向かえた時の達成度に影響してくるわけで、上のキャラ印象の少なさともリンクしてくるのですけど、予算的にマンパワー的にこれくらいが限界値なのでしょうかね。ネタが良かっただけに残念。
あー、あんまり『E17』と比較するのもどうかと思うのだけど、結局はタイトルをだしてしまうというジレンマですな。
◎システム
『E17』『R11』から引き続きのマルチサイトシステムです。二人の主人公が用意されており、視点が切り替わりながら物語が進んでいくというシステム。あの当時は溢れていましたが、今このシステムをやっているのはこのシリーズくらいなので今後も是非とも敬承して欲しいところですね。
ゲーム的なところで言えば、『KID』の完成されたAVGのシステムで、かゆいところまで手が届いています。究極に完成されたシステムといっても過言ではないのでしょうか。ただデフォルトの設定が割とアホで特におかしいのがスキップの設定が「全部」になっている点。どう考えても「既読のみ」でしょうに。…どうして誰も突っ込まなかったのでしょうか。
ただシステムは完成されていますが、演出については残念でした。シナリオや音楽が素晴らしいのに、それらを生かし切れていない。名曲の使い方を誤っていますし、シナリオを演出できていない。というかですよ。文章ボリュームだとか、絵の問題であるとか、そういうのは予算的に限界があるわけで納得せざるを得ないと感じることも多いのですけど、演出部分については違うと思うのですよ。何せ時間ならタップリとあったわけです。それだったら、このシーンではこの音楽をかけて、絵をこのタイミングで挿入して、ちょっとウエイトを置いて、音楽をいきなりストップさせて……くらいの演出なら、もっと頑張れた筈なんです。別に派手なムービーを使えとか、絵を増やせとか言ってるわけじゃないんです。だから、とても残念。
◎音楽
これが素晴らしい。妙に世界観に合っており、どの曲も単品で聴き応えがありました。『EVE』とか『DESIRE』とか『YU-NO』とか、あの辺りの作品の雰囲気ですね。初回版でサントラが付いてくるのは本当にお買い得だと思いました。
◎絵
今回は滝川悠さんとbomiさんの2氏がキャラデザを担当されています。錬丸視点が滝川さんで、鳴海視点がbomiさん。同じキャラクターでも違う主人公視点ではデザインが違うということをやっており、それが作品を構成する要素の一つにもなっています。俺が見ているこの赤色はもしかしたら他人にとっては青く見えているかも知れない――的なことを別のキャラデザを使うことで表現しているんですね。結構深いです。
で、問題になってくるのが各地でも言われているようにイベント画です。これが大変残念なわけです。残念を通り越して凄いと思えるくらい。
さて。唐突に話は変わるのですが、この作品は何回か発売が延期になっています。発売が延期になるというのは、それだけ売り上げが入るのが遅れるということでもあります。大手なら話は違ってきますが、中小でこのダメージはデカイです。さらに言うなら、この作品を作っていた『KID』は倒産してしまいました。それをサイバーフロントが受け継いで、なんとか発売に漕ぎ着けたという経緯があります。どう考えても資金繰りに余裕があるとは思えません。一刻も早く発売し、売り上げが欲しい筈です。
また、発売が延期になった理由の一つにCGのクオリティアップがあったと聞きます。資金繰りが厳しい筈なのに、延期を繰り返し、CGのクオリティアップを計った。作品の為に。大変だけど、より良い作品をお届けする為に頑張ろう。そんな開発側の苦労が垣間見えるではないですか。



けど、その結果がこの様ですよ。一体どういうことなのか。さっぱりわかりません。原画そのものがアレなので修正がきかなかったのか。それとも別の理由があるのか。
ちなみにですよ。原画のクレジットを見ると第一班から第三班までに分かれており、凄まじい数の人が関わっているんですよね。作品の規模から考えて、これは不自然なんですが、作品の発売経緯を考えれば色々あったとしても不思議ではない。不思議ではないのですが、原画に関してはキャラデザの人にやってもらったり、監督の目の届くところでやってもらった方が良かったんじゃないかなーと思います。や、多分監督も完成品を見てそう思ったのかも知れません。結果論。
◎総評
まぁ、あれですよ。『KID』が潰れていなければなーという感じですよ。これをプレイした後に『R11』をやったんですけども、まぁ金のかかり方が違うこと違うこと。なんかOPでアニメーションとかしてますし、CGのクオリティもダンチで凄い。比べものにならないくらいです。その後に『E17』もやってみたんですけど、こちらの方ですら『12R』は負けてましたし、どうにもこうにもI can notでしたよ。もうちょっとお金をかけて作れる環境にあれば色々と違ってきたのかも。
だから、オススメかと言われると難しいところなんですよね。あの手のサスペンス系
AVGが好きな人にはオススメできると思うのですが、それ以外の人になってくると微妙なところなのかも。
コメント
レビューありがとうございます。しかし、凄い勢いであげてますね。ストックがエラいことになってそうですね(笑)
うーん、やっぱりCGなんですね。でも、思ったより楽しめそうなので、とりあえず買ってみようかと思います。積んでいた奈落の城も消化できたことですし。
Posted by: ぱんちょ | 2008年04月10日 22:22
でもまぁ、そんなには気にならないっすよ。ちょっとネタにしている感じで。ちなみにレビューストックはありません(笑) そんな起用な性格でもなかったり。
Posted by: hoimin | 2008年04月12日 16:28