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2009年03月29日 / 『俺たちに翼はない』の感想

◎はじめに

パッケージ画像 前回の作品、『それは舞い散る桜のように』が発売されたのが2002年6月28日、本作『俺たちに翼はない』の発売日が2009年1月30日。実に6年半ですよ。オリンピックを通り過ぎて、生まれたての赤ちゃんが小学校に入ってしまうくらいの時の流れですよ。『ONE~輝く季節へ~』(1998年5月29日)から『Kanon』(1999年6月4日)とかも、当時は待たされた感がありましたが、今考えれば超良心的だったんだなぁと思いました。たった1年だったんスね。いや、本当にビックリした。
 …まぁ、そりゃあですね。6年半も経てば色々と変化してしまうわけで、発表された当時は即購入候補とか思っていましたが、さすがにこれは熱も冷めてしまうというもの。てーか、延期以前に発売日すら延々として決まらず、それにも関わらず、「2007年に発売されるとは言ってない」みたいな感じで開き直っている感すらあったわけで、そりゃあ支持ユーザーの数も減ってしまうというものですよ。超人ふるい落としですよ。さらにゃー、6年も経つと『それ散る』の時学生だった人が社会人になり、新人研修期間をぶっちし、それなりに会社の戦力としてバリバリ働き出す人になっていた、みたいなケースも多い筈なわけで、物理的にプレイ不可能(ゲームなんてやってる暇ねえ)になってくるんですね。もはや情熱が冷めた冷めない、とかそういうのを通り越して、噛み合った社会の歯車からはそう簡単に抜け出せない、みたいな。そんな人文学の摂理が見え隠れですよ。まぁ、オレは結局発売日に買ってるんですけど。ぶははは。
 にしても、アーベルソフトウェア(『ミステリート』)とか、アージュ(『オルタ』)とか、ジェリーフィッシュ(○すべて)とか、エロゲに関する発売延期云々は様々な数を見てきましたが、今作の時の流れの悠大さは尋常じゃない印象ありますな。『それ散る』を発売日に購入し、プレイし、次回作を楽しみに待ち続けてきたオレみたいな人が果たしてどれくらいいるのでしょうか。ちょっと興味あります。

◎キャラクター

画像 我が道に敵なし、みたいな感じの独自路線、王雀孫おうじゃくそんワールド全開とでも言いましょうか。他のエロゲにはない人間臭さを持ち合わせたキャラクターがわんさか登場し、それが縦横無尽に駆けめぐります。『それ散る』をプレイした時に覚えたあの感じ。エネルギッシュな世界観とでも言いましょうか。あれの再来、や、パワーアップ版です。いわゆる記号化されたエロゲキャラではなく、どいつもこいつも癖があり実に楽しいです。昔の学園ギャグ漫画を現代風にアレンジしたかのような感じですかね。
 登場人物も実に30名オーバー。チョイ役を入れればもっと行きますが、立ち絵があって、それなりにイベントがあって…というのがこのくらいです。はっきりいって無茶苦茶ですよ。まぁ、通常ならばキャラ数多すぎてユーザーが混乱してしまうレベルなんですけども、複数主人公システムなのでうまく成り立ってますね。複数の主人公を使い登場キャラを小分けすることで、ユーザーに情報をうまく把握させてます。あとキャラの個性がはっきりしているので混乱もしないです。キャラデザ的には混乱するかも知れませんが。
 しっかしまぁ、どいつもこいつもキャラ立ちしまくっているが故の問題点はありますな。あのキャラにイベントはもっとないのか? とか、あのキャラのエンディングはないのか? みたいな個人的希望がありまくりで、延々と欲求不満になってしまうというか。シナリオ量は4.7メガくらいあるみたいなんですけども、まだまだ掘り下げ可能で物足りない、みたいな。これでは永遠に終わらない。や、ぶっちゃけメインヒロインみたいなサブキャラが多すぎるんですよ(笑) オレみたいなエロゲ脳に支配されていると、ちょっとした会話があって、立ち絵とイベント絵があったら攻略可能なんだな、とか思ってしまいません? そんなサブキャラが多数いるから困る。特に香田亜衣辺りは他社だったら100%攻略対象キャラだったように思います。てーか、専用BGMが雪村小町風なのが憎たらしい。
 各章それぞれで1本のエロゲになるくらいの内容があるのですが、攻略可能なのがそれぞれのメインヒロインのみと、そんな感じですね。

◎シナリオ

画像 ぶっちゃけ、序盤の羽田鷹志編はキツイです。正直な話、何回も挫折しそうになったっスよ。『それ散る』みたいなドタバタ学園コメディーを期待していましたから。それがちょっとアレなコレで、ハートにグサグサ突き刺さるとでも言いましょうか。意味不明な●●で◇◇な展開が続きまくりんぐでしたからね。ああ、これは『それ散る』ユーザーに対する反駁心だなと正直思いましたもの。ありがちクリエイターの突き放し、オタ氏ね、外に出て遊べ、みたいな。――余計なお世話だ、と思いながらプレイしていたですよ。
 それが千歳鷲介編で盛り返し。ここは完全に『それ散る』路線のテイストでした。ギャグが合うかどうかが問題ですが、『それ散る』ユーザーは震える出来だと思います。てーか、オレは震えました。懐かしいね、あのテイスト。楽しいね、お約束ギャグの連発。
 成田隼人編は評価が難しいです。ハードコアーな気持ちがアレでー、みたいな。成田隼人というキャラは好きなのですが、兎に角ソウルなロックがキメキメで。全てをプレイし終わった今なら2週目を楽しめると思うのですが、1週目の段階では評価に難しいと思います。そういう難易度の高さがある内容ですね。
 しかしまぁ、真骨頂はその後ですよ。5クリックに1回は笑えるギャグのオンパレード。カタルシスの連続で、内容は千歳鷲介編以上。千歳鷲介編が『それ散る』と同等と考えると、これはそれを上回ってました。だから、オレはこの時点で今作は『それ散る』を超えたな、と思ったんですね。まぁ、ここまでくるのに30時間くらいはかかりましたけど(笑) ただまぁ、プレイしている最中に前作を超えたな、と評価できるってことは、そりゃあ結構凄いことなんじゃないかなと思います。6年半も前の名作となると、色々と補正が加わって随分と敷居が高くなっちゃうじゃないですか。だから、同等の出来くらいでは超えたな、とは思えないのですが、それがあっさりと……いやはや。これは凄いことです。
 そういうわけで、終盤までプレイして初めて評価が可能になる作品かなーと思います。また2回目をやって伏線を回収すると、さらに評価が上がる内容になってます。正直なところ、途中で何回も挫折しそうになりましたが、最後までやって良かったです。

◎システム

画像 妙に親切な作りです。AVGの基本設計は全て揃っているのは当然として、ロードするとか、ゲーム終了するとか、選択肢が出現した、といった場合、カーソルが自動でボタンの位置に移動してくれます。よって、カーソルを動かす必要が殆どなくプレイすることが可能になってます。最初は違和感ありましたが、慣れるとめっさ便利。これは良かったです。
 あとはスキップ機能が素晴らしく使いやすいです。イベント毎に細かくシーン分けされているのですが、それぞれに100字程のあらすじが用意されています。見たいシーンをすぐに見つけることができるわけですね。てーか、この手間は凄いと思いました。てーか、王氏の筆が遅すぎるからこういう味付けが可能だったのかな? とか思ったり(あらすじを書いているのは別の人)。

◎絵

 うん、まあこれですよ、問題は(笑) この躍動感の無さ、このキャラの見分けのつかなさ。6年半前からまったく変化がありません(まぁ、原画そのものは3年前くらいにはほぼ終わっていた可能性もあるのですけど。あと絵柄そのものは目が小さくなったりといった変化はあるのですけど)。それでもキャラが立ちまくっているのはライターの能力によるところが大きいわけであり。
 でもでも、よくよく考えてみるとこれはこれで大した物なのかも知れません。なんていうか、古き良きエロゲンガーとでも言いましょうか。樋上いたる、あきら、山本和枝、みつみ美里、そして西又葵みたいな。腕の良し悪し、絵柄の好みなどを超越したもはや文化の域にまで達しているとでも言いましょうか。ミッフィーが横歩きしかしないように、クレヨンしんちゃんが正面を向かないように、西又葵の絵柄はこれじゃないとダメなのかも知れません。変に躍動感でもあろうものなら、別物になってしまうのかも知れません。じゃないとこれだけの支持を得られることなんて出来ないですよ。各地のサイン会とか一杯になるわけないですし、パッケージデザインを担当したお米が1ヶ月で2年分売れたとか伝説になるわけありません。だから、これはこれでありなんだと思いました。西又葵は文化だ!

◎エロ

 基本的には各キャラ1回ずつです。まるで、古き良き時代のエロゲですね。なんだか妙に懐かしい気持ちになりました。
 内容は萌エロといった感じで、ハニカミ描写が多いです。オッサンは赤面しまくりでした。あとエロでもギャグが健在だったりします。…さすがは王雀孫ですよ。エロにギャグを挟んでこなくても…とは思いましたが、これはこれで印象深いものになった気はします。薄いながらも工夫して色々見せていますね。

◎音楽

 58曲で、内ボーカル曲が6曲もあるという大ボリュームです。主要キャラは勿論、サブキャラにまでテーマ曲が用意されているという拘りっぷり。さらには各章で違う音楽を使っているから、こんなに曲数があるわけなんですけども。
 えー、最近はですね。良ゲーム音楽が多すぎて、随分とグルメになってしまったとでも言いましょうか。評判の良い音楽でも感嘆することが少なくなったのですが、それでもこの作品に関してはとても(・∀・)イイ!!と思いました。言葉は難しいのですが、オリジナリティがとても強いと感じるからです。聞いていて新鮮味を覚えることが多かったです。『それ散る』小町のテーマ曲のホイッスルみたいな変化球が多い所為もあるのかも知れません。なかなか楽しめました。
 あとあれですよ。ボーカル曲の殆どが西又葵女史作詞なのが、この会社のパワーバランスが垣間見えて良かったです。や、『微笑みジェノサイド』は名曲でしたけどね。

◎総評

画像 クリアするまでに40日くらいかかりましたよ(笑) なかなかの大作でした。ただまぁ、なんというか、これはやる方もそうだったけど作る方も相当な時間がかかっただろうなぁと。
 ボリューム的には『Shuffle!』の4倍くらいはあるでしょうか。これが同じ値段で発売されるのだから、世の中って色々大変です。
 まぁ、色々と伏線も張っており、時系列的管理も難しく、さらに複雑なことも多々やっており、さらには遅筆の王氏がライターとなれば6年くらいかかったとしても不思議ではない…、と思わせてしまう辺りが恐ろしいですね(笑) や、普通これだけ開発に時間がかかったりすると、ゴタゴタがあって途中の空白期間とかあったりするものですが、『俺翼』は普通にこれだけの時間をかけているとわかってしまうのですよ。一つひとつのテキストに込もっている“熱”とでも言えばいいのでしょうかね。そういうのをビンビン感じるわけで。もはや職人が意地になって作っている、みたいな。
 そんなわけで、これはやっておくべき作品だと思います。これだけの大ボリュームにも関わらず、物足りなさを感じるってのは凄いことですよ。お腹一杯に食べているのにも関わらず、まだまだ空腹感がある不思議。
 いやね。ぶっちゃけ、はじめは問答無用で扱き下ろす気でいたんですよ。面白くても詰まらなくても。現に最初の方は退屈で投げ出しそうになりましたし。それ以前に6年半待たせるっていうのは、いくらなんでも社会人として終わっているだろうと。面白くても、こんなに待たせては駄目だー、みたいな。
 それがですね。6年半待たせた甲斐のあるものになっていたと。普通に脱帽です。

 蛇足。にしてもコレは驚いた。

コメント

俺つばは王sが神すぎて内容濃こくて
一番すきになったなw、

個人的にはサブキャラの過去を
濃くして
渡来明日香の過去を
どうにかしてほしかったな↓

ちなみに僕は学生なんで
一週間でクリアできました(笑)

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