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2014年12月11日 / 『WHITE ALBUM2 幸せの向こう側』の感想

◎はじめに


パッケージ画像 評判の良さは聞いていたのですが、その分引きずることも知っていたので、なんだかんだでプレイが先延ばしになってました。1998年に発売された『WHITE ALBUM』の続編。…というよりは、エッセンスだけ頂いた別物。何かの続編だと言うのなら、それは『君が望む永遠』の方に近いかと思います(メーカー全然違いますが)。

 ゲームをしていて「もっと多くの人にプレイしてもらいたい!」とか思ったのは久々ですよ。キャラ、シナリオ、ビジュアル、音楽、演出、全てにおいてハイクオリティな完成度を誇る傑作です。当時は沢山エロゲやったけど、今はもうやらなくなってしまったな…という人がいたら、本作を冥土の土産にオススメしたいです。なんていうか、そういう区切りが付く名作。今後、これ以上に心を揺さぶられる作品に出会うことはもうないでしょう。それくらいに言い切れる超名作。

 で、そんな作品を出したのがリーフというのもまた感慨深いところ。ドラのみで和了れてしまうという奇ゲー『DR2ナイト雀鬼』から16年。リーフはこの作品を出す為に誕生したのだと思う。それくらいに爆発的な完成度でした。

 今ならPS3かVitaのDL版が1905円+税と超お買い得。これは本当マジで買いです。こんなコストパフォーマンスの良い買い物、他にはないよ!

 以下はネタバレを含むので別ページです。

◎キャラクター

パッケージ画像 どんなヘタレ主人公が出てくるのかと思いきや、意外にいいヤツでビックリ。序盤は「この主人公でなんでドロドロになるんだ?」と思ってました。で、蓋を開けてみれば、やっぱりいいヤツで…。

 「これはどうしようもないな~」と思える展開の連発なんですよ。いくら頑張ってもこれは無理! 春希がダメならしゃーない! と。…勿論、一歩間違えれば「バカ春希!」になるのですが、そうならない為の配慮が多かったです。なるべく、プレイヤーに主人公のことを好きになってもらいたかったんだろうな~。ただ、かずさエンドだけはダメー(笑)。あれはアカンやつや…。まず確信しているのだろうけど、アカンやつや…。

 ヒロイン雪菜は作者である丸戸さん曰く「負け癖が魅力」。学園のヒロインで、ミス峰城大付属の常連。なるほど。確かに負けて、負けて、それで成長して魅力になってます。最初の頃は高嶺の花(だけど家庭的で親しみやすい)だった雪菜に魅力を感じていましたが、傷つき成長し、やがては春希の全てを包み込もうとする母性にやられました。あんなん最強すぎるだろ…。

 もう一人のヒロインかずさは気になってほっとけないタイプ。何より可愛い。現実世界にもいるじゃないですか。可愛いから何をやっても許されてしまうタイプって。春希はかずさに一目惚れだから、もう何をやっても許してしまうんですよ。客観的に見れば「バカだな、雪菜の方がいいじゃないか」となる部分もあるのですが、一目惚れなのだから仕方がない。可愛ければ何をやっても許されるのです。

 サブヒロイン小春。『WHITE ALBUM2』という大きな物語を見た時に、果たしてサブヒロイン3人のルートは必要だったのか? と考えることがあるのですが、結論から言うなら必要に決まってます。様々な角度で雪菜が振られないとホワイトアルバムにならないから。ただし、振るのはあの雪菜なのですから、それ相応のサブヒロインが求められます。そういうわけで、小春がそれに相応しかったのかというと、私的にはちょっと微妙。丸戸さんもそれがわかっていたからこそ、クリスマスで春希をめっちゃ弱らせたのだろうなと思います。あそこから、サブヒロインへと繋げたのは見事でした。

 千晶。悪友のようなポジションなのかと思いきや、実はそう単純ではなく。ゲームのヒロインとしては、品の無いところが人気を下げているのかも知れませんが、私的にはサブでは一番好きなキャラです。かずさとは別の意味で振り回すタイプなので、春希には合っている気がします。

 麻理。会社の先輩。キャリアウーマン。それでいて、恋愛不器用。春希の面倒を見ているのは「いろいろな意味で気になっている」から。会社の美人上司に憧れるシチュエーションというのは、現実世界ではありがちだと思いますが、シナリオ重視のエロゲの世界では(キャッチーさに欠けるという意味で)なかなか描きにくいところだと思いますので、ぶっこんで来たのかも知れませんね。

 他ではやはり武也。チャラ男かと思いきや、最後まで春希の味方でいてくれる良心。武也との絡みでもいくつもの名シーンがありましたね。ぶん殴ってもおかしくないのに、手を一切あげなかったのが印象的。恋愛についてどうしてあそこまで俯瞰して物事を見られるのか。それでいて自身の恋愛について不器用なのはお約束。春希のちょっとした行動の変化で、何があったのかを読みとれる能力が凄かったです。どんだけ春希のこと好きやねん!

◎シナリオ

パッケージ画像 良く畳んだな、というのが最終感想。序盤の学園祭ステージから、3人の別れに至った時に、「これはもう大団円はあり得ないな」と思ったのですよ。こんな別れ方をしておいて、ハッピーエンドなんてあり得ない。どう上手く描いたって、ご都合主義になってしまう。3人が元の3人に戻れるわけがない。が、そのご都合主義にチャレンジして、ギリギリの所で着地して見せた。それに脱帽しました。coda雪菜エンドのエンドロールはマジで泣けましたよ。まるで世界でも救ったかのようなカタルシス。本当に素晴らしかった!

 特に変わった設定もなく、どんでん返しがあるわけでもなく、ただ単純に恋愛ドラマを描いているだけなのに、どうしてこんなに面白いだろう、と私自身ショックを受けてます。ゲームのシナリオなんて、設定とか、仕掛けとか、情報(知識)とか、謎とか、犯人とか、バトルとかを上手く見せないと面白くならないと思ってましたから。本作はcodaという仕掛けが一つあるだけで、あとは純粋にドラマ勝負。この直球感が本当にショック。

 もうエロゲで感動とか衝撃を受けることってないだろうな~、って思ってましたから、それを覆されたのがビックリです。

 以下は個別エンド毎の感想となります。

 ◎IC

 →3人が一つになって、バラバラになってゆく過程を描いた序章。選択肢なしで雪菜と付き合ってしまうところが『WHITE ALBUM』だなあと。ここで上手い具合に分岐できたら、もっと明るいお話しにも出来ただろうに。でも残念! これは『WHITE ALBUM』ですからー! 雪菜と恋人同士になるところからが始まりですからー! そんな丸戸さんの主張が聞こえてくるかのようなお話しでした。

 やはり楽しかったのは学園祭ライブ。こんなの楽しいに決まってる! 好き合うに決まってる! こうなったらどうしようもない!

 見せ方として、各キャラクターの気持ちをわかりづらく描いていることが面白かったです。春希とか主人公なのにプレイヤーを騙してるんだもんな~。

 ◎CC雪菜

 →最低の別れ方をしたICから3年。ずっと沈んだ関係から、武也と依緒などの協力を経て、ようやく結ばれるところまでを描いたCC雪菜エンド。学園祭ライブをトレースするかのような、雪菜のライブステージ展開は、「3人が元に戻ることはない」ことを再認識させてくれて非常に切なかったです。でも、物語の折り合いの付け方としては、このくらいが丁度良いのかな。ご都合主義すぎず、でもバッドではない。グッドよりのベター。少女漫画的に考えれば、非常に王道な内容。すれ違って、すれ違って、でも最後には結ばれる。特に変わったことをしているとは思わないのですが、それでもすんごく面白いのは筆者の筆力と声優の演技によるところが多いです。

 で、codaが始まった時の衝撃よ(笑)。また試練を与えるんかい! みたいな。こういうサプライズを出せるのがゲームの良いところですよね。他のメディアではこの仕掛けは真似出来ません。

 ◎小春

 →小春希。主人公と似たようなキャラを出したらどうなるか。矢田さんが存在している所から、こちらはこちらでドロドロするのかと思いましたが、意外にそうでもなく。いじめ展開はちょっと安易だったかな~。矢田さんとは別の大学を受けて、合格して仲直り、という終着点は良かったです。

 ◎千晶

 →サブヒロインにしておくのには勿体ないくらいのネタ。え? こんなに凄いネタを使っちゃうの? と思いましたよ。『痕』とか懐かしかったですし、春希が千晶に流れていく展開も非常にナチュラル。いわゆる騙し討ちなのだけど、実はそうではない。サブヒロインの中では一番のお気に入りシナリオ。

 特に凄かったのが3人の物語を千晶なりに解釈して、決着を付けるシーン。客観的に見ても面倒臭すぎるだろと思うので、実際に描いた丸戸さんは本当にしんどかったと思います。よくこんな大変なことをしたもんだと。

 自分自身のシナリオを客観的に評価する能力がないと出来ない仕事ですぜ、あんなの。

 ◎麻理

 →ヒス子になってしまうところに可愛さを感じられるかどうか。個人的には微妙だったかな~。佐和子さんのキャラは良かったので、その辺りをもうちょっと上手く使って欲しかった気がします。

 時差ネタは良かったですね。ああ、そう締めたかと。小春シナリオ、麻里シナリオとも、私的評価はイマイチなのですが、最後が綺麗にまとまっているのはさすがです。

 ◎coda雪菜

 →風呂敷を広げて、広げて、畳みきれるわけないのだけど、それでも必死に畳んで、ちょっとはこぼれたけど、それでもなんとか仕舞いきった。そんな内容。これまでの過程を考えれば、結婚式でかずさがピアノを弾いてるとか茶番もいいところなのだけど、それでも今まで辛い展開ばかり見てきたので、こういうご都合主義でも許せるというか、むしろ丸戸さんありがとう。

 ◎浮気

 →何気に一番バランスがとれているのがこのシナリオなのかな~と。大人なんだし。あれから時間経っちゃってるんだし。何もかも忘れて楽しんじゃってもいいじゃない、みたいな。ちゃんと報いは受けるしね。

 ◎かずさ

 →あまりにもキツすぎて、孝宏君に殴られた記憶しか残ってません。…というのは半分冗談として、「何もここまで描かんでも」と思うくらいにキツイ展開のオンパレード。ただ、これこそが丸戸さんの描きたかった『WHITE ALBUM』なのでしょうね。“表現者”としての尊厳を維持する為のチャプターだと思いました。こういうのがあるからこそ、長い執筆期間にも耐えられたのだろうな。

 最後まで味方だった武也が叫んだシーンとか本当ヤバかった。ありゃあ、叫ぶしかないよね。武也だけじゃなくて、登場人物みんな叫んでいたような気がするけど、それしかないよ…。

 ビックリしたのは、このシナリオを書いたのが一番最後ってことですかね。coda雪菜で大団円を描いておきながら、それを全てぶっ壊すことの出来るクラッシャーぶり。尊敬します。雪菜を廃人にして幽鬼のように漂わせるところとか。よくあんなの描けるよ…。

 ラストカットに関しては、不具になった雪菜が必至にリハビリをしていることのメタファーだと思っております。

 ◎エクストラ

 →PS3版からの追加シナリオ。浮気エンドのエピローグ前の話。春希がどうやって、回復していったか。国際電話の電話代っていくらくらいなんだろう? とか余計なことを考えつつも、雪菜とかずさが会話しているシーンとか楽しかったです。

 雪菜、かずさだけではなく、他のキャラクターがどうなったのか? も結構描かれており、エクストラまで含めると浮気エンドこそが本作のトゥルーエンドなのかもな~と思いました。雪菜がグッドエンドで。かずさは…勿論バッドだよ(笑)。

 ☆ 公式では、トゥルーとはなく最初に到達したENDが貴方のエンドとありましたが、私の場合は浮気エンドだったという…(笑)。多くの人は雪菜に向かい、かずさになる人は少数とありましたが、私は完全に逆でした。なんでやねん。

◎システム

パッケージ画像 お話しを見てもらうことに特化しているのかと思いきや、意外に選択肢が多く、狙ったシナリオに入れないこともしばしば。「あくまでこれはゲームなんだ!」という主張が感じられました。ただ、2000年代なら兎も角として、現代ではもっと簡単な分岐で良かったのではないかと思う。フラグ管理くらい手を抜いても誰も攻めませんぜ?

 ゲーム的な仕掛けとしてcodaの存在を隠していたのは大正解。ゾーマが出てきた感覚を久しぶりに味わったぜ…。

 Vita版では人気のあった名シーンになると、「ここは人気シーンですよ」と教えてくれる機能があって、それが面白かったです。これは確かに名シーンだ、みたいな。

 あと「次の選択肢に行く」と「前の選択肢に戻る」の機能に懐かしさを感じました。『雫』の頃からあったなぁ、懐かしい。

◎絵

 美しいです。草薙の美麗背景、なかむらたけしさんの原画、昔から定評のある塗り、どれも一線級。昔は水無月徹さんとか、カワタヒサシ(ら~you)さんとか、癖のある絵師が活躍しているイメージでしたが、F&C組が入ってからはキャッチーになりましたね。

◎音楽

 『雫』の頃から音楽に定評のあったリーフですが、ここも16年で相当極まりました。『WHITE ALBUM』の時にボーカル曲が3曲で多い、とか言ってたのが信じられないです。時代は進歩するものだ。

 ボーカル曲だけで14曲くらい。『届かない恋』に至っては3人が歌っていたりする豪華っぷり。最初からこんなに豪華にする予定だったのか、それとも上がってきたシナリオを見てシェンムーに火が点いてしまったのか。採算を考えているとはとても思えないですよ(笑)。…調べてみると、最初から指定が10曲(無茶だ)で、上がってきたのが10数曲(シェンムー!)だったみたいで。エクストラの追加曲なんてフルオーケストラ(39人)だったりして、何処にそんな予算があったのだろうか。この業界に限らないことですが、たまに市場性を無視した予算が組まれることってありますよね。本当不思議。や、1ユーザーとしては嬉しいだけなのですが。ギャフンと言うしかないという。

 私の場合、ゲーム音楽なんてノリが良くて格好良ければ名曲! とか思っちゃう単純思考なのですが、本作はそういう方向ではなく凄くいい! と思わせてくれます。…「凄くいい!」なんて凡庸な言い方しか出来なくてスイマセン。

◎声

 主人公を含めフルボイス。テキストボリュームで4.6MB(5000枚くらい)。

 (リメイク除く)フルボイス作品で圧倒されたのって『ハローワールド』とか『村正』とかありましたが、本作からはそれクラスの熱量を感じました。ボリュームサイズこそ、それらの作品には及ばないものの、ローな言い方をすれば魂が籠もってるんですよ。特に小木曽雪菜と北原春希の二人。

 声優さんなんて、収録が終わったら「おつかれっしたー」とか言って、すぐに切り替わるイメージあるのですが、本作に関しては役を引きずってるんじゃなかろうか、と思えるくらいの入魂っぷり。この熱演がなかったら、また評価は変わっていた気がします。この声優達がこれだけの演技をしてくれたからこその『WHITE ALBUM2』だなと。勿論、元のシナリオが良いのも確かなんですけどね。

◎総評

 3~5年に1本の傑作。ストーリーを追うタイプの作品で、これよりも上の物を挙げろと言われてもそうそうは思いつきません。個人的にはナンバー1かも。

 にわかに信じがたいのが、シナリオ書いているのが一人ってことですね。丸戸史明with企画屋とクレジットされていることから、実際のところは複数人いるんでしょ? と邪推したいくらいです。『村正』の奈良原さん時も一人で凄いと思ったけど、今回もまたトンデモナイなあと。本編の他にドラマCD、デジタルノベル、アニメ版脚本、エクストラ、アフターまで書いているというのだから、本当に脱帽。人間業ではありません。

 あとなんだかんだで、『WHITE ALBUM』の1を当時にやっていて良かったと思います。ストーリー上の繋がりはないのだけど、作中で「ホワイトアルバムという昔の曲で…」というシーンとか、実際に懐かしかったですし、そういう追体験を味わえたのが良かった。

 そういうわけで、是非プレイして欲しい傑作なのでした。

コメント

いまさらなのですが、私、ようやくプレイを終えることができました。
つい昨日全ルートをクリアしたばかりで、まだ興奮が抑えられない状態です。ラストは雪菜ルートで終えることができました。
控えめに言って人生ベスト3に入るソフトとなりました。ちょっと実生活に影響が出そうです。

冴えヒロの感想の時にほいみんさんが推してくれなかったら絶対に手に取ることのなかったソフトです。
本当に感謝しています。


最終的に私の中でのヒロインランクは
雪菜>>千晶=武也>かずさ>>千春=麻里
となりましたw

 これ、本当にもの凄い作品ですよね。
 最近は作品に影響や刺激を受けることって
あまりなかったのですが、久しぶりに引きずったなあと。

 ヒロインランキングは私もそんな感じですw
武也の悟り感はなんなのだw

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