Remember11(super lite 2000版)(KID/AVG/2000円/2005年5月12日発売)
◎はじめに

 2年くらい前に『Ever17』をプレイしていて、その続編である本作には発売日前から注目していたんだけど、ネットでの評判を見る限りはプレイしない方がよさげだったのでスルー。それから1年後。廉価版が2000(税込み2100)円で発売されると聞いたので、「その価格なら」と思い購入に至ったのでR。それにしても、発売から1年3ヶ月で2000円まで値下げしちゃうなんて、良い時代になったと思う。確かにゲームってのは発売日周辺以降はまるで売れないからねえ……。一気に値下げして少しでも回収しようという発想は利に適っているといえないこともない。ただ、発売日に6800円近くで買った人は「やられた」って感じだろうけども。
 ちなみに私の『Ever17』の評価は最高傑作。正直、コンシューマ純正のAVGでここまでクオリティの高い作品が出るとは思わなかった。当時、既にギャルゲー業界は死に瀕していたし、希望がもてるのはエロゲ界くらいしかなかった。そんな中で、コンシューマでここまでやったというのは特筆に値すると。いやー、世の中わからんもんやなぁと思ったわけでR。
 そういうわけで、『Remember11』もいつかはプレイしようと思っていたのよ。世間では駄目と言われているけども、自分がプレイしたらどんな風に思うのかなーと。それだけ『Ever17』は偉大だった。あの作品をプレイしたときのカタルシスは得られないだろうけども、それに近いものは得られるんじゃないかと。
 ちなみにパッケージはリバーシブル仕様で、ひっくり返すとsuper lite 2000のロゴがないジャケットに切り替えることができる。正直、super lite 2000のロゴが入っているのは格好悪いと思っていたので、これは嬉しい仕様。
◎ストーリー紹介(説明書から引用)

 西暦2011年1月11日 火曜日
 羽田空港を飛び立った小型旅客機CRU110「HAL18便」は、『冬川こころ』を乗せ、一路日本列島の最北端「稚内」を目指していた。しかし、同機は原因不明のトラブルに巻き込まれ、雪深い山中――「朱倉岳」に墜落してしまう。
 奇跡的にも九死に一生を得たこころ。他にも3名の生存者の姿があった。
 過酷な環境下にさらされた彼女らだが、幸運にも雪原の中で避難小屋を発見する。
 とりあえずそこへ避難し、救助を待つこととなる一同。
 ――急転する天候・寒さ・暗闇・飢え・怪我……。
 そんな中、発見される驚異の事実。
 「7月4日」付けの新聞――なぜ未来の新聞が!?
 その記事には“旅客機墜落事故の乗客乗員は、ゆにを除いて全員死亡”とあった。
 死のカウントダウンは、すでに始まっている。
 果たしてこころ達は、人里離れた酷寒の地から無事脱出することができるのだろうか?

 ところ変わって――日本海に浮かぶ絶海の孤島「青鷺島」。
 そこには周囲を高い壁に囲まれた閉鎖施設があった。
 「スフィア」という名のその施設は「ある目的」のために建てられたものであった。
 ある日、スフィアの屋上からひとりの男性が転落する。
 その男性は『優希堂悟』だった。
 その後、幾度となく悟は身の危険にさらされる。
 スフィアには他に3名の滞在者がいる。
 犯人は、この中に、いるのか?
◎キャラクター

 これはね。良いと思う。どのキャラも大事にしているし、個性もあるし、しっかりと描かれてもいる。アニマ、アニムス、ペルソナ、オールドワイズマン、グレートマザーなどといった象徴が用意されていることが、各キャラのキャラ立てに役立っているのか、隙がなく、無駄もない。
 ただシリーズ伝統の電波系キャラがいなかったのが、寂しかった。いやね。ぶっちゃけ、真面目すぎるというのはある。エンターテイメントであるということを忘れてはいまいか。物語は基本的にとてもシリアス。常に緊張感が付きまとい、プレイしている間は手に汗握る。息もつかせない展開で畳み込まれ、実際に息をついている暇がない(笑)。もうちょい遊び心を大事にして欲しかったというのはあった。
 あとギャルゲーというのを完全に忘れているというのもよくない。いや、実際にギャルゲーじゃないんだけどさ。でもさ、ギャルゲーの絵師を使ってるってことは、ターゲット的にはギャルゲー層なわけでしょ? これは結構重要なことだと思う。この作品だけを見るなら、それでもいいかもしれないけど、今後のことを考えるとね。ギャルゲーであることを忘れてはいけない。それを忘れて暴走し、自分の世界に走りこけてしまった作品をいくつも見てきたものとしては、このシリーズまでもがそうなってしまうのは悲しいわけで。軌道修正求むところ。
◎シナリオ

 完結させることを放棄したのではなく、あえて中途半端な形で終わらせることで作品として完成することができたという、とても複雑な内容。賛否両論あるが、実際にプレイした者の意見としてはギャルゲーでこれやっちゃいかんだろの一点に尽きる。文学小説じゃないんだから。ライトノベルみたいなもんなのだから。やるにしても、もうちょっと丁寧にやる必要があった。この作品はいくらなんでも乱暴すぎる。
 いやね。そこにいたるまではもの凄く面白いのよ。『Ever17』みたいに中だるみしないし、心地よい緊張感の中で物語に没入し、どんどんプレイすることができる。テキストの質も『Ever17』より上。しかし最後で「これで終わり?」ということになり、まるで情事が終えた後に相手が言ってくるセリフみたい、って違う。
 話しがそれた。やはり、あえて完結させなかったというのは痛い。風呂敷が畳めなかったのではなく、カットしているのである。それだけにメチャクチャ悔しい。伏線張りまくりで先が楽しみでプレイしてきたのに、それが収束していくのカタルシスはどんなものなのだろうと、ドキドキワクワクだったのに。それを見せられなかったというのは、あまりにも歯がゆすぎる。
 完結させてしまうと、物語そのものが完成しない可能性は確かにあったけど、それでも完結させるべきだったと俺は思う。大体さ、『Ever17』プレイしたファンがどんな作品を望むかってことは、余裕でわかっていただろうよ。それに対して、こんな挑戦状を叩き付けたってのは1クリエイターとしては良いのかもしれないけど、プロとしては駄目なんじゃないかと。素材として、テーマとして、内容として、『Ever17』の続編として相応しいものを持っていたからこそ余計に声を張り上げたくなる。これが単なるウンコゲームなら、俺はこうやってレビューすら書かなかった。未練がましくウダウダ書いているのは、それだけ傑作になる可能性があったからなわけで。あ〜、勿体ない。
◎システム

 AVGのシステムとして100点。思い付く限りの全ての機能が搭載されており、文句を付ける部分が一つもない。この辺りは『Ever17』の時に既に完成されていた部分ではあるけど、それにさらに磨きがかかったという感じ。時代は進化するもので、エロゲにも劣らないほどのインターフェース。操作は快適そのもの。まるでストレスを感じない。スキップも早いし、『街』みたいなTIPSの機能も搭載されており、遊び心満載で面白い。
◎音楽

 ボーカル曲2つを含む全35曲。BGMに徹しており、全体的に自己主張が感じられないような作りになっている。しかし、それは仕様だと思われる。というのも、デフォルト時のBGM音量がやたら低い設定となっており、かなり上げないと音声に邪魔されてまともにBGMを聴くことができない。恐らく、BGMに関してはボーカル曲を除けば「何か流れているな」程度に認識してもらえば良しで、プレイヤーには画面と声優の演技に注目して欲しかったのではないかと。
◎ボイス

 当然フルボイス。主人公についてもモノローグは別としても、セリフとして表現されている部分は全て喋る。演技は素晴らしく、それは物語をより一層味わい深くしている。特に黄泉木なんかは声優の演技があって、さらにキャラクターとしての魅力を増している。やはり有名声優が使えるというのはコンシューマ特権やね。俺は声優オタというわけではないけど、この演技を聴くだけでも満足できる部分ってあるもの。
 それとどうでもいいのだけど、この手の内容で子安武人さんが主人公演じていると、どうしても『EVE』とか『探偵紳士』とかを思い出してしまうね(笑)。まぁ、その辺を狙っているのだとしたら、大したものでR。
◎演出

 ムービーがあったり、寒さを表現する為に吐く息が白くアニメーションされるといった演出があったりする。あとは拡大、拡小といったカメラワーク。吐く息が白くアニメーションってのは、技術的には目パチや口パクと一緒なのだけど、今までに見たことなかったから新鮮で良かった。寒さを演出するのに、かなりの効果を上げている。
 が、大体はそんなところで他に変わっているという部分はない(笑)。まぁ、この辺りに突っ込みを入れるのはナンセンスということで。物語が理解できればそれで良いのだし。
◎絵

 原画は左さん。ボーイズゲームで良く見る系統の絵柄ではあるが、シリアスな本編の内容に合っているので問題なし。個人的には『Ever17』の絵師よりも好き。画力そのものもそれを上回っているのではないかと思う。
 絵の枚数的には『Ever17』と同等くらいか。作品の規模から考えると1枚絵のビジュアルが少なかった。あとは立ちポーズのバリエーションも少な目。プレイした感覚で言うと、比較的どうでもいいようなシーンに1枚絵が使われているような気がしてならない(笑)。なんというか、ビジュアルが表示された瞬間にインパクトを感じる部分が少ないというか。「え? ここで1枚絵?」みたいな使い方がほとんどだったなぁ。だから、余計に枚数が少なく感じたのでR。
◎総評

 この作品、もの凄い量の下調べだったと思う。元から心理学とか、量子学とかに詳しかったという可能性も否定でけんけど、一朝一夕で作れるような内容じゃないのよ。かつての『EVE』や『YU-NO』に通じるような、そんな深さがあるのよ。たかがギャルゲーって言われればそれまでなんだけどさ。でも、それで片づけるにはあまりにも惜しいのよ。いわゆるSF的な内容を既存の科学で論理的に説明しようとしている点とか、『YU-NO』に通じるし、まぁ、本作のそれは難しすぎてわけわからんかったけどさ。『YU-NO』ができるだけわかりやすく噛み砕いて説明していたのに対し、本作は専門用語全開でプレイヤーを完全に置いてけぼりだったけどさ。普通の人であれをすぐに理解できる人は多分いないよ。しかし、ハッタリとしては充分な効果があったわけで、現に俺はそれに圧倒された。
 そういうハッタリがさ。作品を面白くしていたのね。他にもそう。登山の知識とか、薬の知識、非常事態においての緊張感などなど、面白さのエキスがいっぱい詰まっていたわけで。「かもめのうた」の解釈なんかも面白かったよ。でもやっぱり、総合的な評価は高くできないわけで。
 なんというか、『Ever17』が評価されて、それを超えるものをと全力疾走したんだけど、最後の最後に転倒しちゃったという感じ。絶賛されるような内容にできたのにあえてそれをしなかったのは、『Ever17』に対するアンチテーゼなのか、クリエイターとしての悪い部分が出てしまったのか。その辺はわからないけども、俺としては全部を描写した内容のものが見たかったなあ……。
 ま、作品をプレイした後、自ら考えるなり、考察サイトを見るなりして、自分なりに納得することができる人にならオススメできる。2100円(税込み)やしね。
2005年5月19日 記

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