君が望む永遠 アージュ/多重恋愛AVG/8800円/2001年8月03日発売)
◎はじめに

君が望む永遠パッケージ リーフ帝国の滅亡(してねぇよ)により、戦国時代へと突入したエロゲ業界。そんな中で、戦陣をきって大作をぶつけてきたのがこのアージュ。今までは、知る人ぞ知るってな感じの中堅ブランドだったが、今回の作品にて一気に大ブレイク。天下取りの有力な候補になった。
 アージュといって惜しまれた作品の中に化石の歌というタイトルがある。これは作品内容はかなり良かったのだが、ちっとも売れなかったという変わった作品であった。売れなかった理由は簡単、広報に力を入れていなかったのだ。
 で、その教訓を生かして、今回の作品では大規模なPR作戦が展開された。いろいろ行われたのだが、その中でも特筆すべきは第一章をまるまる収めた体験版の配布。第一章と一口に云っても、プレイ時間にして約4〜5時間ほどのボリュームがある。
 この体験版の配布が大成功だった。先が気になって気になって仕方がないというユーザーが続出。
 押し寄せる期待の波。ソフト注文の波。先行して物語を見せられているだけに、余計に気になる第二章の内容。とにかく期待の雨嵐。しかし、ソフト生産のキャパ超えて発売延期。別に落ちつけなくても……。既に有給をとっていた社会人エロゲーマーは泣きを見ることに。
 その後無事に発売されたが、一部不適切な画像が含まれていることから自主回収(では遙騎乗位のCGのモザイクのかかり方が薄いからとのこと)。当然、ソフトは品薄になり値段は高騰。う〜ん、自業自得だとはいえアージュさんに対して素直に同情。苦境に負けずがんばれ〜。
◎ストーリー紹介

 主人公である鳴海孝之は、将来に対して具体的なビジョンをもたず、周囲に流されて生活している白陵大付属柊学園3年生。
 しかし、親友である平慎二、早瀬水月達から進路の話を聞く度に漠然とした焦りを感じていた。
 7月の夏祭りの日、待ち合わせに遅刻した水月は、親友の涼宮遙を連れてやってくる。その彼女は数日前本屋で出会った、内気な女の子だった。
 それ以来、何かと3人の輪に遙を加えようとする水月。しかし、遙の自分を避けようとする仕草に、孝之の苛立ちは募っていく。
 そんなある日、3人の行きつけである、学園裏の丘に呼び出された孝之は、そこで待っていた遙から、好きだと告白される。
 内気な彼女の勇気を振り絞ったひとこと。
 彼女を傷つけることを恐れた孝之は、その言葉を受け入れてしまうのだが……。
◎キャラクター

 なんといっても、早瀬水月と鈴宮遙の二人。
 特に遙。っていうか、遙。なにがなんでも、遙。というか、遙萠え。だって、可愛すぎるんだもの。ステレオタイプなヒロインとはまったく違う。こういうキャラに似ている、と例を挙げることすら不可能。正に脳天直撃。彼女の一挙一動に魅力を感じてしまった。日が沈み雨が降りしきる中、段ボールの中に子犬が捨てられている。子犬は必死に鳴いているのだけれど、誰も見向き一つしてくれない。そんな儚さを兼ね備えている女の子。遙の存在だけでも、この作品を買って良かった。
 水月は妙に親しみやすいキャラクター。登場するキャラクターの中で一番リアライズされているのではないだろうか。それだけに親近感が沸く。感情移入もしやすい。なにより、このヒロインのシナリオを読んでみたい、と感じさせてくれる。彼女の存在も、この作品にとって大きい。
 でも、主人公がヘタレ。第一章ではそれなりに男気というか、甲斐性を見せるのだが、第二章からとんでもなく堕ちる。とてもじゃないが、感情移入などできない。複雑な気持ちが相克する中、優しさが壁となって結論づけられずにいるのだが、腰だけはしっかりと動かす。その辺、かなり不快。しかも、その優柔不断さのお陰で、ベストな選択を逃し、ベターな選択をも逃し、ややベターくらいな結果になってしまう。プレイヤーとして、奥歯に詰まるものを感じた。
 あとは遙、水月の後に数えられるヒロイン茜と、数合わせっぽいヒロイン5名。っぽい、ではなく本当に数合わせだったわけだけど。
 主人公から見た物語の輪として考えるのなら、このくらいの人数は妥当だろう。しかし、シナリオ的なバランスを考えると完全に崩壊している。崩壊している、とは大げさな形容かもしれないが、この作品をプレイされた方なら誰もが肯定してくれるだろう。5名の中にとんでもないのが混ざっていたわけで。
 まぁ、それはさておき、魅力的なキャラクターが多いことは間違いない。女性キャラクターに負けず、ファミレス店長や親友慎二もいい味を出している。そういうキャラクターがあってこそ、物語に深みが出るわけであって、君が望む永遠という素晴らしい世界が生まれるのである。
 加えて表裏の性格が描けていることも、評価が高い理由の一つ。甘えん坊の遙でも強い面があったり、強がっている水月でも弱い部分があったりだとか。それゆえに各キャラクターに奥深さがでている。非常に素晴らしい。
◎シナリオ

 私ね。この作品をフライングゲットして(8月2日)、その日の内に遙シナリオをクリアしたのね。でもって、全部のシナリオを終えたのが、8月22日だったの。すんげーボリューム。YU-NO、月姫、ECHO、この辺のタイトルに並ぶくらいのシナリオ量。でも、ライター4人。なんていうか、シナリオ分業の悪い部分が露呈されちゃってるな、って感じ。各シナリオ毎でキャラクターの性格に差異があるし。
 それと私的に書いておきたいのが、第一章(体験版)をプレイした時に想像した第二章の面白さと実際のそれとの違い。第一章は明るいし、楽しいし、コミカルだ。けど、第二章は違う。のっけから降っている雨が陰を暗示している。とても暗い。勿論面白し、素晴らしいし、感動もする。けど、想像していたものとは違った。例えるなら、To Heartみたいなものを想像して買ったけど、実際は加奈だったという感じ。体験版を経て本編をプレイした人と、そうでない人との受け取り方の差はここにでるだろう。
 と、前口上はこれくらいにしておき本題に入る。なんか、全体的にシニカルな匂いが漂う。恐らくは偶然なのだろうが、こうもいろいろ出てくるとさすがに疑いたくなる。例えば、作品が奇跡から始まる現実的な物語であったり、キャラクターの名前が大空寺あゆ特徴的な口癖を持っていたり、そもそもタイトル自体が永遠であったりとそんなところ。
 メインシナリオ(3人)と他のシナリオ(5人)とでのプライオリティの差をかなり感じた。メインシナリオに他のシナリオを継ぎ足してるという感じ。それが上記したバランスを崩しているということ(の理由の一つ)。でも、一つ一つのシナリオを見ていけばその出来はかなり良い。同じ構成の焼き直しではなく、様々な角度からのエンドが用意されているのも面白かった。まじかるカナンとかそんな感じだったな。
 あと、好感したのはリアライズされている部分。窮地に立たされた時でも、都合の良いことは起きない。楽な道に進んでも、必ずそのツケが廻ってくる。このヘタレ主人公にはこれくらいがいい。中には、そんな主人公でも同情したくなるとんでもないしっぺ返しがあったが。
 遙エンドで感じたカタルシスも、最後の最後で吹っ飛んだ。すべてが無に帰り、何も残らなかった。波阿弥陀仏……。
◎コーヒーブレイク1〜小休止〜

 作中出てくる絵本「ほんとうのたからもの」が、野原しんのすけ作「ぶりぶりざえもんのぼうけん(劇場版ブタのヒヅメより)」と被っていると思ったのは私だけ……だろうな。ちなみに、ぶりぶりざえもんの方が感動した。
◎システム

■必要環境■
OS:Windows95/98/2000/Me
CPU:Pentium200MHz以上(推奨PenII350MHz以上)
メモリ:32MB以上(推奨192MB以上)
解像度:800*600,ハイカラー以上
     (推奨トゥルーカラー以上)
HDD:800MB以上(推奨900MB以上)
CD-ROM:4倍速以上(推奨8倍速以上)
サウンド:PCM,CD-DA
 右のような感じでこの作品ではそこそこのスペックを要求してくる。それにしても、PenIIの350が推奨とは世の中変わったねぇ(しみじみ)。メモリ192MBってのもビックリ。
 まぁ、スペックを要求するだけのことはやってる。特にエフェクト関係の充実は凄い。主人公がずっこけたのを画面を90度回転させて演出してみたりとか、雨が地面に落下したときの波紋や飛沫がきちんと表現されていたりとか、福本伸行宜しく画面が「ぐにゃっ・・・」ってなったりとか。
 早送りやら、シナリオ回想やらといった機能は一通り装備。音声プレイバックの機能まである(エルフ以外で初めてみた)。ここまで付けたのだから、一つ選択肢に戻るの機能も付けて欲しかったなーというのが本音。でも、同日に発売された君がいた季節フルボイス版ではこの機能あるんだよね。この差はなんなのだろう? あと、既読、未読の判別が甘いということを付け加えておく(結構、気になる)。
 アージュがいつも使っているシステム「rUGP」を今回も使用。私の環境下では安定していた。が、各地で悲鳴上がっているところを見ると、そんなに信用できるものではないらしい。まぁ、私は平気だった、ということで。インストーラー起動しにくかったけど。……なんだかなあ。CD入れても起動してくれなかったから、かなり焦った。非常にドライブが読み取りにくいインストーラー。蛇の生殺しとはこのことで、何回も何回もドライブに入れ直して漸く起動してくれた。もう少しでOSの再インストールをしそうになったよ。(現在はアージュサイトにて対応済み)
◎音楽

 ボーカル曲2つを含む全28曲。曲数は多いのだが、印象に残った曲というのは特になかった。強いていえば、オープニングのボーカル曲くらいだろうか。栗林みな実さんの熱唱が印象に残ってる。
 全体的に単調なイメージ。BGMに徹しているといえば、それまでなんだが、拘って作ったということを耳にしていたので、そういう意味で正直なところ期待外れだった。ちと辛辣だが、今時のエロゲーマーはもう少しレベルの高い曲を要求する。
 PCMとCD-DAの二種類選択可能なわけだが、CDチェックがあるのでDAのみで良かった。余計なHDD容量喰うだけだし。
◎ボイス

 よくフルボイスにした。この膨大なシナリオに対して、フルボイスをつけたのは素直に脱帽。すげーを通り越して無茶の領域になってる。そういうレベル。半端じゃない仕事量。
 声優さんも皆上手い方ばかり。特に涼宮遙こと栗林みな実嬢。彼女のボイスはなんていうか聞いててとろけるものがある。声優としての演技力に加えて、彼女自身が持っている声そのものに魅力を感じる。だって、聴いてて思わず顔がニヤけている時があるんだもの。
 ただ、エキストラのキャラに死ぬほどヘタクソなのが混ざっていたのは何だったのだろう?
 あとアレは古谷徹さんなのか?
◎絵とエロ

君が望む永遠AVGシーン 原画はバカ王子ペルシャさん。私的にはクリティカルヒットな絵柄。文句なし。アージュといえばカーネリアンさんをイメージしてしまうのだが、今回その名前はなかった。
 でもねぇ……。各CGに塗り手の個性が表れてしまってるのね。同一人物にしては、かなり違和感を感じてしまうようなモノが何枚も。原画の他に、サブ原画の方もいるようだが、同じ人物でも別の方が描いているようなモノがある。この辺の整合性をキチンとして欲しかった。中でもわかりやすいのが、立ち絵と一枚絵とでの絵柄のギャップ。スタッフの中で変だと思った方はいなかったのだろうか? それとも、描いている内に絵柄が変化していたとか? う〜ん、よくわからん。
 背景は草薙(誰彼もここだったな)による外注。1年という開発期間の短さはこの辺に現れているのかもしれない。勿論、これで構わないけど。
 あと立ちキャラのサイズが、奥と手前の二種類用意されている。なかなか珍しい仕様。キャラのポーズが頻繁に変わるのも特徴。
君が望む永遠エロシーン そしてエロ。ウェブ等で銘打ってるような「ヌキを誘うエロチシズム」を感じられたのは、第一章のみだった。前後関係って重要やね。悲愴感溢れる状態の中で、どうやってエロさを感じとれというのだろうか。確かにエロい。最近の恋愛エロゲーに比べ、遙かに多い量のエロが盛り込まれている。汁もある。アナルもある。路上もある。しかし、それ(エロ)を感じとれない。否、感じとれる状態になれない。
 作中、辛いことが沢山ある。気持ち的にかなり凹む、勿論、ナニの方も沈む。そんな状態でエロシーンになっても、とても燃えられない。
 が、数回のプレイを重ね、その悲愴さに慣れてきた時、ようやくそのエロさを感じることができた気がする。そこまで達すれば満足のゆく仕上がりに思える。恋愛系エロゲーによくあるなご褒美的エロではない。キチンと物語に組み込まれている。エロを重視している。
◎コーヒーブレイク2〜小休止〜

 作中こんな言葉がでてくる。
 「夜空に星が瞬くように 溶けたこころは離れない 例えこの手が離れても ふたりがそれを忘れぬ限り……」
 これは一度かよいあった心は、空に星が瞬くのと同じくらい離れることはないという意味らしい。
 しかし、星が瞬く(明滅する)のと同じくらい離れることはない、とはどうことなのだろうか? う〜ん、う〜ん、う〜ん……。
◎総評

グラフ この作品を10段階でわかりやすく表現すると次のようになる。
 とにかくラストが強烈すぎ。もはや、測定不能。サイコホラーっていうのは、こういうのを指すのだろうね。眼鏡の光の反射が怖い。マジでトラウマになる。
 シナリオについての部分じゃ、もうちょい遙シナリオについて書く筈だったのに。でも、今じゃその記憶が跡形も無くなっちゃったよ。霧散しちゃったよ。
 それにしても、今までにない決着のつけ方だったねえ。いろいろ盛り上げておいて、結局全部ぶち壊してしまうんだもの。構成的に始めの方に良質のエンディングを用意しておき、最後の方に爆弾を設置する。そして、爆破。
 普通、見せたいエンディングってのは、最後の方に見せるんだけどね。その方が印象に残るから。
 それとも、これは君が望む永遠の世界に没入してしまったユーザーを強制送還させる為の措置なのだろうか。まぁ、そう考えさせてしまうくらいのインパクトがこの愛美シナリオにはあったわけで。
 しかし、なんだかんだいいつつも、これを一年で作ったというのは凄い。EVE〜burst error〜を半年で作ったのと同じくらいに凄い。プレイ時間にして40時間以上。勿論、その短期間ゆえの歪みが出ちゃっていることも確かなんだけど、それを通り越すくらいの仕事であることは間違いない。お勧めの一作。
2001年8月25日 記
2002年1月11日 修正

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