うたわれるものリーフ/SLG+AVG/8800円/2002年4月26日発売)
◎はじめに

 大作ラッシュと思われた2002年の4月26日だったが、殆どの強豪が開発スケジュールの都合により回避してしまった。そんな中で生き残った大作、それが本作である。
 『こみっくパーティー』から3年。その間、『猪名川でいこう!!』やDC版『こみっくパーティー』等の発売があったが、実質的にはこの『うたわれるもの』がリーフ東京開発室の2作品目という事になる。開発期間は2年以上。『大悪司』よりも長い。エロゲとしては、常軌を逸した時間の掛け方である。
 しかし、そんな本作だが、私的にはそれほど期待していなかった。『こみっくパーティー』のフィーリングが合わなかったという事もあるが、『まじかる☆アンティーク』の凡作ぶり、『誰彼』の奇ゲーっぷり等を考えるとどうにも食指が動かない。
 が、メーンでシナリオを書いているのが、む〜む〜こと菅宗光氏だという事を知った時、全てを捨てて買いに走ってしまった。『BE-YOND』のライターがこんな所にいたとは。『BE-YOND』を傑作として崇めている私にとって、『うたわれるもの』買いは必然だった。無論、不安点の方が多かったのは確か。リーフにまとわりついた負のイメージは勿論、『こみっくパーティー』で菅氏が書いていたシナリオが、イマイチぱっとこなかったというのもある。メーンではなく、サブで書いていた故にかもしれないが、『BE-YOND』で見せた才能が枯渇しているという事も充分に考えられた。いろんなライターが枯渇していったのを見ているしな。
 正直な話、期待3、不安7くらいの気持ちだったわけで。菅氏とはいえリーフ。嘗て見せてくれた奇跡を夢みて、『こみっくパーティー』に特攻し、『まじかる☆アンティーク』に突撃し、『誰彼』で玉砕した。4度目はもうない。いくらむ〜む〜でも無理だろう。リーフはもう終わったのだから……と。
 しかし、諄い文章書くねオイラも。なんか『大悪司』のレビューと被っている書き出しだし。まぁ、いいや。
◎ストーリー紹介

 大陸の北東に位置する辺境の小國の村、主人公はそこで目を覚ます。エルルゥによって大怪我をして倒れていたところを発見され、助けてもらったらしい。
 だが、一命は取り留めたものの彼はそれまでの記憶を失っていた……。自分の名前さえも思い出せない主人公はハクオロと名付けられる。
 エルルゥ達の手厚い看護を受け徐々に回復したハクオロは、村の貧しい生活を見て自分が出来得る限りの力を貸すことにする。傷を治療しつつ、畑を耕したり、村人との交流を深める等、ゆったりとした時間が過ぎていく……。
 そしてハクオロの傷も大分癒え、村人皆が待ち望んでいた収穫の時季になる。皆が協力して頑張った甲斐もあり、今までより多くの収穫量となった。
 だが、その噂を聞きつけた藩主が難癖をつけ、税として貴重な食料を徴収してしまう。更に様々な要因が絡み、ついにハクオロ達は叛乱軍として蜂起せざるを得なくなってしまった……。
◎キャラクター

 主人公ハクオロ。いつものように記憶喪失。菅氏の描く主人公はこれがデフォルトなのかなー、という感も。冷静沈着で物事を常に俯瞰しているようなタイプ。でも、ちょっと小市民的な所もある。しかしよくよく考えてみると、記憶喪失の方がナチュラルに情報をプレイヤーに与える事ができてナイスかもしれないと思った。あと主人公=プレイヤーと投影しやすい点もね。
 その他には、面倒見が良く優しいが、非常に嫉妬深いヒロインのエルルゥ。寡黙だが、愛らしい雰囲気を持っているエルルゥの妹アルルゥ。身体が弱く盲でもあるが、清らかな心を持つ癒し系キャラのユズハ。宗教国家の姫であり、それらしい気品を持っているウルトリィ。ウルトリィの妹、姉とは正反対のおてんばだが、どことなく姫らしい雰囲気もあるカミュ。ひょうひょうとして、真面目な人をからかうのが大好きな怪力の持ち主カルラ。くそ真面目で堅苦しいが、ドジを踏む事の多いトウカ。ユズハの兄、素早い身のこなしをする熱血漢オボロ。オボロの部下で彼を異常なまでに慕うドリィとグラァ。エルルゥ、アルルゥの祖母で、時には厳しく、時には優しい、腕の立つ薬師トゥスクル。ハクオロが親っさんと慕う豪快な男テオロ。テオロの妻、おおらかだが、時には強い(怖い)部分を見せるソポク。エルルゥ達の國に仕えている圧倒的な武力を持つ武人ベナウィ。ベナウィの腹心、豪快だが砕けた雰囲気のあるクロウ等々。
 数多くのキャラクターを見事に描ききっている。キャラの持つ魅力を消費しきれずに、物語が終わってしまうというのはエロゲの中では良くある事だが、本作は違う。キャラ毎に様々なエピソードを用意し、それをキチンとシナリオに組み込んでいる。実に味わい深い。勿論、多少は食い足りない部分もあるけど、ここまでやってくれれば大満足。
◎シナリオ

 一大サーガとも云える壮大なストーリー。フォークロアとかそういうのは、『恋姫』と被っているけど、それとは比べものにならないくらい深い。そして、大風呂敷を広げた後、それを見事なまでに包み込むその手腕、此程までの物語を破綻させずに描いたは圧巻の一言。ぶっちゃけた話、凄すぎて打ちのめされる。
 第一印象は悪かった。エロゲには不向き(だと思われる)伝奇の世界観。人外のキャラデザ。でもでも。あー、ちくしょう。む〜む〜を信じた甲斐があったというか。期待は薄かっただけに、この喜びは大きい。逆に「いくら掛かったんだろう?」とか「採算合うのか?」とか変な心配をしてしまうくらいだ。膨大なシナリオを飽きさせずに、寧ろ進めば進む程のめり込ませてしまう。プレイヤーを飽きさせない為に、次々と新しい展開を用意しているんだもんなあ。こりゃ凄いよ。
 特質すべきは笑いの部分。『BE-YOND』でもあったけど、ディスプレイの前で思わず吹き出してしまうくらいに笑えるシーンが盛り沢山にある。キャラ同士の掛け合いが兎に角楽しい。エロゲ界で今これが出来るのは、麻枝准とむ〜む〜だけじゃなかろうか。勿論、基本は真面目なのだが、間に挟まれたそういう笑いのシーンが、キャラの個性を引き出させたり、物語に厚みをを出したり、飽きさせなかったりしている。
 1回目はシナリオを追う為に。2回目は1回目では気付けなかった細かい伏線を回収する為に。と、最低でも2回はプレイしたい。そうして考察する価値は充分にある。
◎システム

■必要環境■
OS:Windows98/Me/2000/XP
CPU:PentiumII300MHz以上
メモリ:64MB以上
解像度:640*480,フルカラー
HDD:1GB以上
CD-ROM:8倍速以上
サウンド:CD-DA
 声もない、音楽も別なのに1GBも容量を消費する。なぜそんなに喰うのかと云うと、通常使われる立ちキャラCG、ビジュアルCGに加えて、SLGパートのマップやチップ(ちびキャラCG)、OPムービー等に容量が割かれているから。
 全体的な構成を一言で云うと、SLGが付いているAVG。大抵のシミュレーションゲームではSLGパートがプレイ時間の大幅になるわけだが、本作はそれとは全く逆。殆どにおいてがAVGパートで、時折SLGパートにバトンタッチするという構成。SLG部分は演出の一部程度、と考えるのが妥当かもしれない。メーンはあくまでもAVGパートであり、そのストーリー。
 AVGのシステムは移動時のみ選択肢が表示される以外は全てテキスト垂れ流し。今時、総当たりさせるわけにもいかず、また選択肢が全くないというのもな……という感じのせめぎ合いの中で、この移動時のみ選択させるという中途半端なシステムが生まれてしまったのだと思う。まあ、栄えはしないわな。
うたわれるもの戦闘シーン SLGのシステムは簡易的。避けの概念がない、防御力を上げる必要性が薄い、味方の強くなるスピードが早いので、後半がすんごく楽、等々。あと必殺技が強力で、バランス崩壊にさらに拍車をかけていたりする。バランスの取り方としては、どんなに阿呆なプレイの仕方でも詰む事のないような感じ。ま、普通にやってる分には温すぎるんだけどな。一応、レベルの概念があるお陰で単なる足枷ではなく、ゲームとして楽しめる程度にはなっているけど。要するに、『サクラ大戦2』の戦闘みたいなザマにはなっていないというわけで。テキストで「敵を倒した」と描写されるよりも、実際にキャラクターを操って「敵を倒した」方が、充実感あるし。
 あと、今回は最新版のセーフディスクを装備しているとの事で、安易にはコピーできない模様。と、それは良いのだけど、起動時にマスターCDかをチェックされるのがウザイ。認識までにちと時間が掛かるんだよなあ。これ関連の不具合(誤爆)の情報を聞かなかったのは幸いだったけど。
◎音楽

 世界観にマッチした曲達。そういやリーフと云えば、音楽にも定評があったな……という事を思い出しつつ。相応な素晴らしい曲達が揃っているという感じ。全部で20曲ちょい。それにボーカル曲が2曲。ボーカル曲はこんなもんで良いとして、他はもうちょいあった方が良かったんじゃないかなーと思う。本編長いわけだし、もうちょい多い方が楽しめたんじゃないかと。尤も、同じような曲が鳴っていて退屈だったなー、という感じはしなかったんだけどね。
◎ボイス

 ない。が、終わってみればそれで良かったという気もする。既に感覚が麻痺して盲目状態になっている可能性はあるのだけど、ほら、声をイメージする楽しみとか(笑)。まぁ、キャラが多すぎて声有りにするのは無理だったんだろうなぁ、とか想像できちゃうんだけどね。あとは、コンシューマ移植の為の伏線か。コンシューマで声有りになれば、それだけで買いに走る人が出るだろうしねえ。
◎絵

うたわれるもの会話シーン みつみ美里嬢が担当かと思いきや、今回は甘露樹氏が原画を描いているのね。確かにこの作風は、みつみ嬢よりも甘露氏の方が合っているような気がする。なんとなく、落ち着いた感じの絵柄が世界観とマッチしているというか。
 塗りはリーフ塗り(F&C塗り(笑))をさらにパワーアップさせた感じで文句なし。全体的に統一された感じの塗り方になっており、構図、表情、仕草等々、全てナチュラルに仕上がっている。背景も綺麗。
 ビジュアルCGの枚数は少な目なんだけど、その分、立ちキャラのCG数がめちゃ多い。まぁ、登場人物が多いからなのだけどね。
 洗練されたお仕事っていう感じで、この辺は如才ない出来。
 その他に戦闘時にマップ上を動き回るチップのキャラ絵が凄い。その元となる「chip.a」というファイルが、なんと197MBもある。ちっこいのだから、一つ一つの容量は大した事ないのだろうけど、膨大な数を描かれているのがわかる。(攻撃時のパターン+移動時のパターン+その他細かい動きのパターン)×登場キャラ分。脱帽させられる仕事量。
◎エロ

うたわれるものエロシーン あかん。あかんでー。これぞコンシューマへの移植が見え隠れ。道場六三郎がかつらむきしたダイコンよりも薄いで。物語に対するエロのプライオリティが低すぎ。
 でも、『EVE』や『YU-NO』がエロ薄で我満できてしまったように、本作も我満できちゃったのよね。
 それにしても、菅氏は『恋姫』で充実したエロを描いている筈なんだけどなあ。なんでそれをやってくれないのだろう。村を襲う兵隊が村人を陵辱〜とか、あっても良かったんじゃないかなーと。
 『こみっくパーティー』だって、エロシーンだけは鬼畜モード全開、主人公が豹変して面白かったのに。『まじかる☆アンティーク』だって、「パン、パン、パン」とピストン音でクリックさせる仕様が面白かったのに。『誰彼』だって、「ふーっ! ふーっ! ふーっ!」と主人公の息づかいが描写されていて面白かったのに。残念やなあ。
◎総評

 最高傑作。全エロゲの中で、2〜3年に1本出るかどうかの完成度。恐らくリーフは、もうこれ以上の作品を出せないだろう。また菅氏をメーンに据えて、3年くらい開発期間を掛ければもしかするかもしれないけど多分無理。それくらいに充実してる。
 今回は偉く満足した。これまでの鬱憤を晴らすかのような充足感。散々期待してプレイして裏切られて、期待せずにプレイしたら、やたらと満足のできる作品だったというのは皮肉なもんで。今までリーフに対してメタクソ云ってきたけど、御免なさい。グーの音も出ません。
 そういうわけで、『DORA2ナイト雀鬼』から続いている私のリーフ作品連続プレイ記録はまだ続きそう。
 ――って、『ABYSS BOAT』やってねぇなぁ。
2002年5月09日 記

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